Elephant Pierrot
指を吐いた。
誰のものか、俺は知らない。
ただ酔い様に任せてシンクに吐いたら指があった。
部屋からイルカ先生の声がする。どうしましたカカシさん。
俺は答える。なんでもありませんよ。
返事はない。イルカ先生は黙っている。
指を吐くなんてはじめてだから、困ってしまった。
明日になったら返しに行こう。
イルカ先生に見つかったらいけないと思ったから、指を拾って棚にしまった。
翌日、また指を吐いた。
昨日より短いように思う。
酔いつぶれるのが悪いのかと考えながら、シンクを見つめて首を傾げた。
部屋からイルカ先生の声がする。どうしたんですかカカシさん。
俺は答える。なんでもありませんよ。
返事はない。イルカ先生は黙っている。
今日は里中探し歩いたのに、指の主は見つからなかった。
明日こそ見つけなければ。そう思う一方で、見つからなければいいとも思っていた。
イルカ先生に見つかったらいけないと思ったから、また指を棚にしまった。
指は2本になった。
そして今日、喉に詰まっているのはおそらく腕だと思う。
けれど吐けないことには確認できない。
たぶん、骨の強さが邪魔しているのだ。吐き出せない。
部屋からイルカ先生の声がする。どうしたんですかカカシさん。
俺は声も出せず、シンクに向かって呻いた。
イルカ先生が歩いてくる。もうどうしようもなかった。
イルカ先生に見つかったらいけないと思ったから、俺は口元を拭ってそれを嚥下する。
吐き出せないものだから、飲み込むしかなかったのだ。
本当はいつか欲しいと願ったあの人の指だと知っていた。
指だけでは約束の指きりすらできないのに。
何も知らない優しい人は、大丈夫ですかと首を傾げて、優しい指で背を撫でた。
Fin.
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