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昼下がりだった。


イルカは家の扉を開ける前からあの銀の髪の恋人が来ている事を分かっていた。
よって驚いて荷物を取り落としたのは、そのせいではなかったのだ。


おかえりなさい、早かったんですね。
穏やかにそう言う彼が、はたけカカシという名のその男が、剃刀を握り締めて一糸纏わぬ姿でいること。
それがイルカを凍りつかせたのだった。


何をしているんですか、と問えば、剃ったんですと彼は言う。
はあ、と生返事をするイルカに対して彼は神妙な顔をして、背中は難しかったですと言う。
言いながら寄ってきたその身体を見れば、確かに剃ったようだった。
腕も足も、陰毛の1本も残らず。
そんなところが完璧主義かよと眺めるイルカの考えを肯定するように、ちらりと見えた脇も綺麗に剃り上げられていた。


ねぇイルカ先生と声をかけられて、間近に寄った真剣な目に一歩引く。
それを気にした様子もなく、この場合髪の毛も剃るべきですかとカカシは言った。
そうですね、と言えば、この人はおそらくそうするだろう。
揶揄するには真剣すぎる面持ちに困惑する。


対応を悩んで、どうしたんですかと素直に聞いた。
カカシは悩む様子もなく、剃ったんですと繰り返す。
その何のことはない、いい天気ですねと言うに等しい態度に困り果てて、イルカはため息と共にそうですかと呟いた。
それをじっと見つめるカカシは、どう思いますかともう一度問う。


まるで普通の昼下がりであった。
明るい部屋の中、真顔の上忍が全裸で剃刀を持って佇んでさえいなければ。


イルカは今度は躊躇わず、意味がないですと答える。
カカシはその、真っ直ぐに自分を見つめる黒い目が呆れているのを見て取った。


なるほど、無意味だ。
剃ってもまた伸びる。


カカシは剃刀を放り出す。
危ないですよと言うイルカを無視して、部屋に戻って服を探し出す。
真面目な人のため息を、苦労して剃りあげた背に受ける。


髪を剃り落とす前に帰ってきてくれてよかった。
そう思ってカカシは笑った。




Fin.



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